【ホタル】の文化誌物語
ポリマー商工が「ウコン」に着目するきっかけとなった書籍の著者でもある尾崎先生が、ホタルについてまとめたコラムがありますので、ここに掲載させていただきます。
皆様がホタルに興味を持っていただくきっかけになってくれれば幸いです。
【ホタル】の文化誌物語 健康科学博士 尾崎 寿
“物思えば沢のホタルお我身よりあくがれ出る玉かとぞみる”
- 恋しい男の訪問がとだえがちになった頃、貴船神社に舞うホタルを見て、それがあたかも自分の身から離れ出た魂のようだ、と言うやるせない思いを歌った「和泉式部の歌」なのです。夏の夜空にはかなげに飛び交うホタルには本当に人を夢幻の境に誘わしめるものがあるのです。
- ホタルを扱った文学作品は非常に多く、日本人に古くから愛され、親しまれてきた昆虫の筆頭に数えられるのです。〔日本書紀二巻〕に、「天照大神」がその孫「瓊瓊杵尊」を、葦原の中つ国に降らせようとした時に、この土地の様子を下記の様に説明して、
- 貝原益軒は、「日本釈名」や「大和本草」の中で、【ホハ火ナリ、タルハ垂ナリ】として、体から火を垂らす虫と言う意味であると語源を説明されているのです。他に「星垂る」であるという説もあるようですが、いずれにせよこの呼び名は古いものであることは間違いないようです。
ホタル科の種類について(9種類)
ホタルは世界中に約2000種類もあり、そのうち日本に分布しているものは約30種類います。ホタルと言うと「光る」と思われていますが、あまり光らないホタルもいます。日本で「光る」ホタルは9種類です。その中でゲンジボタル・ヘイケボタル等はよく知られているホタルです。
- オバホタル=低山地から山地まで普通。日本・千島・樺太・朝鮮
- オオオバホタル=オバホタルより大きく初夏区初家訓
- オオマドホタル=昼間に葉の上に見られる。本州・九州
- アキマドホタル=光は強くて点滅しない。対馬・朝鮮・中国
- ゲンジホタル=幼虫は水生でカワニナを食べる。本州・四国・九州・対馬
- ヘイケホタル=幼虫は水生に住み、汚水で育つ。発生はそろわず成虫の光は弱い。日本・千島・朝鮮・満州・東シベリア
- ヒメホタル=幼虫は陸生、本州・四国・九州・屋久島
- ツシマボタル=幼虫は水生に住んでいる。対馬
- カタアカホタルモドキ=山地の葉の上に見られる。本州・四国・九州
ゲンジボタルとは?
ゲンジボタルは日本では最大のもので、成虫で1.2~1.8cmほどあり、蛍狩り等で親しまれているものも多くはこの種類なのです。幼虫は清流の小砂利のある場所に棲み、カワニナという巻貝を捕食しているのです。
老熟すると河畔の土中に入って蛹化し、次の年の初夏に羽化するのです。
ヘイケボタルとは?
ヘイケボタルは体長が0.7cm~1cmと一回り小さく、出現はゲンジボタルよりやや遅く、秋口にかけて成虫となるものもいるのです。また幼虫は水田などの汚水中に棲むことができ、日本住血吸虫の中間寄生主である「ミヤイリガイ」を食べているのです。ゲンジボタルに較べて、光は弱いが、明減の回数は逆におおいのです。昭和の終わり頃の新聞に、群馬県月夜野町の水田でオタマジャクシやドジョウを食べるホタルの幼虫がいることが発見されたと言う報道があったのです。カワニナなど淡水産の巻貝しか食べないはずのホタルの食生活にも変化が現れたのです。
観賞としてホタルは、古くから蛍狩りなどで親しまれていて、〔江戸名所図会〕にも2~3の例が記載されています。〔落合土橋〕の項目には、「この地は蛍に名あり、形大いにして光も他に勝れたり、山城の宇治、近江の瀬田にも越えて、玉の如く又星の如くに乱れ飛んで、光景最も奇とす」とありその情を彷彿とさせてくれると記載されています。
薬用ホタルとしての効果とは?
- ところで蛍狩りは、単に観賞のために捕まえるのではなく、薬としての活用の意味も兼ねていたのです。例えは滋賀県の守山付近では、この蛍狩りを職業として、生きているものは観賞用に、新だホタルは薬種屋に売っていたと言うことが伝えられているのです。
- 新だホタルをすり潰して、これを油で練って貼ると、腫物の吸い出しに効果があると記載されています。また血止めにもなるそうです。またこれを煎じた汁は、感冒・百日咳等の解熱剤となり、腎臓、腰痛等にもよいと記載されています。これは本当か嘘かはわかりませんが、粉末にしたものを、禿頭に塗るとよいとも言われていますが、確かなことはわかりませんが発想からすると、「ハゲ頭」に塗るとその光はいよいよ輝きを増すように思えるのですが・・・・・・果たしてどうなのかは試してみなければわかりません。
- 人類が自然と一体であった太古から経験的に覚え、伝えられてきた薬草木食・昆虫食の民間療法は長い歴史の知恵の産物であり、ときとして現代医学も及ばぬほどの効果のあるものや、一方でなにやら疑わしいものなども混在しています。医者や薬のない時代や地域で、日々の健康や病気治療のため、迷信・俗信・薬草木・昆虫を選び利用しようと試行錯誤してきた歩みそのものも、一つの立派な文化だと考えられます。何よりも自然の大地の恵みの薬草木・昆虫等がいかに人類の文化に貢献してきてくれたかに感謝いたしましょう。